::BGP001 フロントウィングの秘密

最初はウィングの構造のおさらい。

昨年までのフロントウィングは3次元ウィングと呼ばれフェラーリが開発したものだった。この3次元ウィングが出現するまでは、今期のウィングのようにウィングの底面が平らな直線的な形状だった。この平面的なウィングは、直線走行するときは、前面からの気流をとらえて強力なダウンフォースを発生するが、高速コーナーなどで、斜めからの気流を受けたり、風の影響などで、急激にダウンフォースが増減し、アンダーステアオーバーステアー等が、予測不能の状態で起きた。3次元ウィングはこういった気流の変化に影響を受けることなく高速コーナーで安定したハンドリングが得られるソリューションだった。

My 3DWing
ウィングは、フラップにより、大気を上方に押し上げる事で、下向きの力(車体を下に押し付ける力)ダウンフォースを得る。直線時に最適なダウンフォースを得ようとフラップの角度を調節した場合。図の青い矢印のような急な傾斜になるが、高速コーナーでは、進行方向とノーズの方向が異なるため、ウィングには水色の矢印のように斜めに気流が入るので、傾斜が緩くなりダウンフォースが減ってしまう。そこでウィング中央部を窪ませて、すり鉢状にすると、気流が入ってくる方向毎に、自由な傾斜を設定できる。例えば、正面方向は緩く、斜め方向は強く設定していけば、直線走行時は、ダウンフォース弱めで、最高速が狙え、高速コーナーでは、ダウンフォース強めで、高速にコーナーを抜ける事ができるようになる。もう1つこのウィングの特徴は、ウィングの翼端版が、限界まで小さく、高速にコーナー時にドラッグ(空気抵抗)が少ない。

しかし、今期の規定で、この形式のウィングは禁止になり、平面的で、翼端版の大きさにも制限が付いた。さらに、中央部のフラップは禁止され、サイズも大きくなった。ドラッグが多く、横風に弱いウィングでは、安全に高速コーナーを回るのが難しくなる。速くなりすぎたので、コーナリング速度を落とせというFIAの方針だ。だが、一方で、フロントタイヤのサイズがそのままで、溝付きタイヤからスリックタイヤに変更されたので、フロントタイヤのグリップ力が充分に高くなり、ほとんどのチームは、ドラッグを減少させるような、ウィングを装着してきた。

そんな中、ブラウンGPだけは、今期の規定に沿った3次元ウィングを投入してきたと、私は見ている。去年までの3次元ウィングを中央部で両断し、左右のパーツを入れ替えた。中央部分は、規定に沿った平板で繋いでいる。ただしこれでは、翼端版のサイズ規定に合わないので、翼端版を2枚構成のように見せかけている。

My 3DWing構想版
図のようにコーナーのイン側の翼端版(3次元ウィングの片割れ)が機能する。アウト側の翼端版には、隙間があるので、気流は抜けてドラッグも少ない。ただ、翼端版に見せかけた3次元ウィングは、サイズも小さく、去年までの3次元ウィングの例え10%の機能しかなく、ラップタイムも0.01秒しか上がらないかも知れない。それでもロス・ブラウンなら、”0.01秒いいじゃないか、徹底的に積み上げていこう”と言うだろう。さらに利点として、外向きに遠心力が働くコーナリング時に、イン側のみにダウンフォースが効けばイン側のタイヤの接地性が上がり、ハンドリングし易くなるだろう。前戦で、レッドブルベッテルが、1周目でバトンに抜かれた。ベッテルのミスのようだけど、問題のコーナーでは、後ろから強い風が吹いていたそうだ。コーナリング中に、風の影響で、ダウンフォースが急激に減って、外に膨らんだんだと思う。これは設計したエイドリアンのミスだよね。既存の有効な技術を徹底的に磨き上げるロスと天才肌のエイドリアンの差なんだろう。

My BGP001フロントウィング

ノーズを下げてきたのは、ウィングを支える支柱の強度を上げる目的と、ひょっとして、ノーズ部分の形状をフラップ代わりにしている事も考えられる。これも形状的に、イン側方向にダウンフォースが働くので都合が良い。

最近使用しているフロントウィングより、シーズン前テストに使っていたフロントウィングは、翼端部分の3次元ウィングのドラッグを減らす機能が付いていた。前より悪いウィングを使っている???シーズン前テストで、他チームよりラップタイムが1秒以上速かったのは本当で、FIAの介入を恐れて、調整によりダウングレードして他チームとの差をわざと縮めているのではないかと思っている。現役のドライバー達も、ブラウンGPは本気で走っていないと言う意見の記事も目にする。

さて、シルバーストーンだが、ウィリアムスに注目している。ブラウンGPフロントウィングを真似してきたんだよね。他チームよりノーズが低めの、ウィリアムスやフェラーリは、このソリューションが有効だと思う。モノコックを改造するより、ノーズのみの交換だから簡単だ。ノーズまで下げてきたら注目だ。逆に最悪なのがBMW、翼端版が、コの字で、斜めからの気流を受け止めちゃう。クビサは、高速コーナーで起きる急なオーバーステアにお手上げ状態だと思う。他チームは、アンダーステアーと戦ってるというところだろうか。今年のフロントウィングには、可動式フラップの機構がつまっているから、形状変更や、可動方式の変更は大変だ。