::VF-25を作ろう 番外編

今回は、番外編ということで、
1.なぜ六角大王を使う?
2.六角大王の次のステップ
3.3Dの表現方法
という話題です。ある程度、形状が出来上がってくると、もう少し、綺麗に見たい、正確な3D表現で、形状を確認してみたくなります。その辺りを、説明します。


1.なぜ六角大王を使う?

講座で、使用している3Dソフトは、六角大王フリー版です。点を打ち、線を引き、面を張るといった3Dソフトの最低限の機能しか持っていません。表示画面も1画面のみしかありません。では、何故、筆者は、このソフトを使っているか?

1)覚える事が少ない
マウス操作と、Shift、Alt、Ctrlとの組み合わせだけを覚えればいいだけです。高級な3Dソフトは、機能が多い分、より多くの事を覚える必要がありますが、それらは、そのソフト独自のお作法であり、他のソフトに乗り換えた場合には、まったく役に立たないものです。

2)左右対称3Dオブジェクト限定
車、飛行機、ロボット、人体等、基本的には左右対称の形状なので、左右どちらかの面を作れば、自動的に対称面が、作られるのは、作業が楽ですね。左右対称機能が無い場合は、左右どちらかを作って、反転コピーして、全体像を確認するというプロセスが必要になり、煩雑です。

3)特異な空間認識力&直感的入力方法
講座では、紹介していませんが、通称:マンガ機能が、六角大王には、あります。斜め前を向いたマンガの絵や人物・物の写真を、お手本に使い、画面を斜め表示にしたままで、形状をトレースする機能です。例えば、VF-25のインテーク形状は、右は、このように見える、左は、このように見えると、形状をトレースすると、計算により、インテークの3次元形状を求めてくれる機能です。VF-25の、色々な角度の画像が数枚あれば、そこから抽出した3次元形状から、全体の形状や、バランスや、部品単位の形状を、把握することも可能です。また、斜め表示での、線や点の位置把握能力が高く、斜め状態で、点を繋ぐとか、線を分割、面を分割をあっさりとこなしてくれます。慣れてくれば、斜め表示のまま、思った位置に点や線を移動することもできます。

4)全て自分で作る
高級ソフトのように、「形状の概要だけを指示していき、レンダリング時に、面を何分割するかを指定して、実際に点を打つ位置はコンピューターまかせ」ではなく、六角大王の場合は、基本的に、点を打つのも、線を引くのも、面をつくるのも、全て作者の意思で行います。ここに点を打つ理由、面を密にする理由、荒くする理由も、自分で考え、自分が点を打つ。それは、コンピューターが、作ったモデルではなく、完全に自分自身が作り上げたモデルです。3D画像を表示する部分では、コンピューターの力を借りてはいますが、六角大王のように、3D表現時に一切の加工が行われない場合は、自分自身で、作った画像と、言っても間違いではないと思います。Computer-generated 3D imageryでもなく、Computer-aided 3D image(ry)でもなく、My 3D imageと言えるのは、自分が作ったと思えるのは、六角大王が、低機能なためだと思います。

以上4点が、六角大王を使う理由です。高機能の3Dソフトも幾つか使ってきましたが、3D形状の把握、3Dオブジェクトの作成に集中でき、出来上がった3Dオブジェクトを自分が作ったと誇れるのは六角大王だけでした。

2.六角大王の次のステップ

六角大王の画像は、早く表示する(ぐりぐり動かす)事を目的としているため、正確性に欠けています。本来見えないはずの面が見えたりするのは、面の前後関係を計算する部分を端折っているからです。連続面をスムージングする機能がないのも問題です。そこで、正確な描画力と、スムージング機能を持っていて、六角大王のファイルを直接読み込めるソフトを紹介したいと思います。


次回の講座終了時のVF-25画像:六角大王

1)3DACE

3DACEに六角大王ファイルを読み込ませた状態:面のみ表示、スムージング表示

フリーのソフトです。六角大王を、お手本にした、3Dソフトで、OpenGLを使った綺麗な表現能力を持っています。ただ、六角大王の持つ「特異な空間認識力&直感的入力方法」を持っていないので、モデルを作る作業には、お勧めできませんが、六角大王で、作った3Dオブジェクトを、そのまま読み込める点や、オブジェクトに画像を貼り付けるテクスチャーマッピングが、行えるので、次のステップとしては有効でしょう。
こちらからダウンロードできます。http://hp.vector.co.jp/authors/VA017881/3DAce/index.html

ロケーター、パレット等、雰囲気は六角大王と同じです。3DACEのWindowsや、アイコンに、六角大王のファイルをドラッグ&ドロップすれば、すぐに表示してくれます。

注意点:
六角大王上で、「隠す」処理されたグループは、3DACEでは、描画されない。六角大王で、「見せる」にしておくか、3DACE上で、「編集」ー「すべて選択」、「加工」ー「見せる」を適用する。
・「面のみ」表示や、「スムージング表示」状態が、保存されないので、毎回、「描画」ー「面のみ」、「描画」ー「スムージング表示」を適用する必要がある。
・使い込んでいないので、他の機能はまったく知らない。

2)人体モデル・エディタ:HuManMDL


HuManMDLと、同じコアを使っている自作ビューワー画像

これも、フリーソフトだが、目的がまったく異なる。六角大王で、作った人型モデルに、関節の設定をすることで、ポーズや、動作を行わせるソフトだ。それをリアルタイムで動かす事ができる。

VFの完全変形も、これを使って変形させている。また、自作ビューワーも、このソフトのコア部分を用いて作ったものだ。ここからダウンロードできるhttp://www.koalanet.ne.jp/~anoda/space/mlab10/mlab10.htm

Direct3Dが必要だが、かなり古いバージョンが、前提なので、Win2kや、XPでは、導入する必要はないだろう。

HuManMDLを実行し、Windowに六角大王ファイルをドラッグ&ドロップすると、スムージング角度等を聞いてくるので、指定し「OK」ボタンを押せば、スムージングされた画像が表示される。

光源の位置が、変えられるので、動かしてみるといい。光が命の3DCGは、光源の変化で、色々な表情を見せてくれる。

3)その他

メタセコイアという3Dソフトは、六角大王プラグインがあるので、次のステップの有力候補です。
また、六角大王には、DXF形式のファイル出力があるので、これを用いれば、大抵の3Dソフトに、データを取り込むことも可能です。六角大王スーパーという製品版へのステップアップもあるが、作法が異なるので、まったく別のソフトと思った方が良い。(筆者は、機能拡張されたマンガ機能を使うためだけに、この製品を購入した。)

3.3Dの表現方法

出来上がった3Dオブジェクトを、3Dソフトを持っていない人に見せるには、2通りの方法がある。

1)画像として見せる(この日記もこの方法を使っている)
2)WEB3D対応(ブラウザのプラグインとして、リアルタイムにオブジェクトを表示できる)の形式に変換する。

1)の方法は、せっかくの3Dオブジェクトの魅力が半減してしまう。
2)の場合は、3Dデータを公開する必要があり、データの無断使用や、改竄されることを覚悟する必要がある。著作権に厳しいモチーフの場合、特に注意が必要だ。勿論、データ保護をしてくれる有料ソフトを購入する事で、ある程度は、回避される場合もある。

ここでは、六角大王および、六角大王対応ソフトの描画力、WEB3Dの描画力を比較してみようと思う。

サンプルは、ガンダム・シードに登場したエターナルという宇宙戦艦です。


六角大王:甲板上に見えるはずのレールが、見えずに、本来見えない部分にレールが、表示されてしまっている。スムージング機能は無い。


自作ビューワー:Direct3Dによる描画、スムージング処理されている。Direct3Dは、本来ゲーム向きの機能なので、質感や、描画の正確性は、それなりである。この画像が作品を見せる場合の基準となる。


3DACE:OpenGLによる描画、スムージング処理されている。白っぽく見えるのは、他のソフトと、光源の位置が違うためだろう。質感の表現力が弱い。


ShockWave3D:WEB3Dの1つ。面が近接する部分の表現に、問題がある。速度優先のため、計算精度が、甘いせいだろう。そのくせ、描画は遅いほうである。


XVL:WEB3Dの1つ。OpenGLを使うのは3DACEと同じだが、質感の表現力が高く、描画の正確性も最も高い。ファイルサイズも最も小さい。ブリッジの窓が透明処理されているのに、描画は、早い。

総合的に、XVLが、優秀である。WEBを使うために、データ容量は、少なく、データの再現性は、非常に高い。元々、膨大なCADのデータを、WEB経由で、やりとりするための規格なので、当たり前なのだが。ただ、この規格は、使用に関する制限が多く、著作権問題も、その1つである。この技術を使ったソフトを自作しても、そのソフトの著作権は、XVL技術を作った会社に帰属するという馬鹿げた事を主張している。WEB3D規格で、主流になることを放棄しているかのようだ。